それでも!信じたかったんだ!!

●「冒険手帳」は1972年に出版されたサバイバル指南書である。
 特に食の記事はリアルなイラストで兎の裁き捌き方を紹介するなど衝撃の連続で
 とりわけ昆虫食は想像力をふんだんにかき立てられた。

 「蜘蛛は例えるならチョコレートの味」
 「蛾の鱗粉は甘い、ぼってりした食感はキナコに例えても良いかもしれない」
 「カマキリのぷっくりした腹をローストしてパンに挟むと野味あふれるサンドイッチに」
 『~である』と言い切られると子供的にコノ作者スゲー!って思うじゃない。
 本当に擦りきれるまで読みこんだ。サバイバルに憧れる少年のバイブルだった。

●だが野外生活の経験を積むにつれ、記述に怪しさを見て取るようになる。
 たまたま潰れた蜘蛛(僕は蜘蛛を殺さない。蚊蝿ゴキを捕食する益虫ですぞ)から

 チョコレート臭を嗅いだことはないし
 蛾の鱗粉でひどくかぶれた事例を文献でも実地でも多数見た。
 ハリガネムシを知ってからはカマキリのお腹は火を通しても食べたくない

                                     ↑ コレは好みの問題だ。
 実際に食べて検証した奇書「ゲテ食大全」が出版されるのはかなり後だが
 いつしか「冒険手帳」の昆虫食に関する記述はアテにならないと結論づけた。

●一方、植物の頁は肉親に教わった知識と重なっていて怪しさはあまり感じなかった。
 そんな安定感のある記事の中で心に残ったのはさる学者(名前は書いてなかった)の論説。
 「植物をすり下ろせばデンプンが手に入る。

  太平洋戦争の南方戦線でおろし金を携帯すれば餓死は防げた」
 学校の授業で戦中の飢餓を知った小僧には目からうろこのアイデアが。
その手があったか!
 後発の各種サバイバル本でおろし金の話をとんと見かけないのは気になったが。

●さて。21世紀になってC.W.ニコル著「冒険家の森」を手に入れた
 様々な極限(砂漠・極地・海洋・山岳etc.)ごとに事例を詳しく挙げ、サバイバルを説いている。
 死に至ったケースも多く取り上げられ、かなりハードな読み応えだ。失敗した話はクるね。
 で、20数年ぶりですよ。例のおろし金に関する話が目に留まったのは。
 発案者は大阪府立大・中尾佐助教授という方。実際には試さなかったらしい。
 そしてこれを南方のジャングルで実地検証した人たちがいた。以下引用。
 「実験のためにオロシ板を用意し、野草の根を掘って、食用にしようとしたが、不可能であった。

 人間の手で掘り出せるような草の根ではなかった。
 生命が充実していながら、まったく人間にとって不毛の地だった。」

 (「ニューギニア高地人」 本田勝一/京大西イリアン学術隊)

●ここまで書いて本屋を覗いたら「冒険手帳」が文庫で復刻されていた。
 先の昆虫食の文面もそのままで、本当に読み込んでいたな>自分。
 改悪があった。「食べる」の項目で南方の食人~人間の調理法が紹介されていたのだが
 対象の名称が「イノシシ」に変わっていた。おかげで不自然きわまりない文面に。
 この箇所は現地に行って調べた石毛直道氏の著作どおりだったので
 信頼していた部分だったんだけどなあ。・・編集方針も含めて、いろいろ残念だよ。

●最後に「ゲテ食大全」著者の大人のスタンスを紹介しておく。(注:引用ではありません)
 「未だチョコ味の蜘蛛にお目に掛かれないが、あの記事がウソだとは思いたくない。
 まだチョコ味の蜘蛛に巡り会っていないだけかもしれない。
 ただ「冒険手帳」の著者が絶望的な味覚音痴だった可能性もあるかも知れない。」

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